発行2004年4月12日
NO,24

「死の海域」世界に広がる!

―国連環境計画が発表―

国連環境計画(UNEP)がこのほど発表した報告書『世界環境概観』(GEO)2003年版』によると世界には酸素が欠乏した海「死の海域」が約150ヶ所あり、魚介類の生存が脅かされ、漁業にも大きな影響を与えていることを明らかにしました。

同報告書によると、[死の海域]は肥料、下水からの栄養物、交通や工場からの窒素酸化物の排気などに起因する窒素分過剰によるもの。この窒素分によってフィトプランクトンと呼ばれる海洋微生物が異常発生し、海水中の酸素濃度が下がります。激しい場合には、酸素欠乏状態となった水域から魚が逃げ、貝、ロブスターなど動きが緩慢な海底生息生物の大量死を招きます。

酸素が欠乏した[死の海域]は1970年と比べて面積、数でも増大の傾向にあり、漁業資源を枯渇させ、漁業や海産物を利用している産業にかかわる人々に大きな脅威となっています。「死の海域」は一平方`以下の比較的小規模なものから7万平方`のものまでさまざま。

報告は「問題の原因について緊急な行動がとられなければ、急速に拡大する恐れがある」と警告しています。報告は「死の海域」として米国のチェサピーク湾、日本の一部近海、バルト海、バルト海と北海を結ぶカテガット海峡、黒海、アドリア海北部、北欧のフィヨルド、米国のミシシッピ川から栄養物、肥料が流れ込むメキシコ湾をあげています。

報告は、対策が採られている地域として欧州を流れるライン川流域をあげ、流域国諸国間の協定で窒素廃棄物のレベルを各国が半減し、北海に流入する総窒素量を37%削減したことをあげています。しかしアジア、中南米、アフリカ諸国の沿岸では工業化や農業の集約化のなかで窒素廃棄物の量が増加していることに懸念を表明しています。報告は具体的な克服のための行動として、窒素源の削減に重点を置くべきだとし、その例として森林や草原が過剰窒素を吸収し、河川や海洋への窒素分移動を減速させる効果があるとして、植林などを奨励。飼料を無駄遣いしない[精密農業]の増進も一つの選択肢だとしています。また化石燃料に依存したエネルギー政策の転換や自動車排気からの窒素酸化物除去技術の推進を求めています。

地球の“エアコン”に異変?

北太平洋深層水の温度上昇

深い海の底を流れる深層海流は、地球の寒暖を調節する役割を担っています。地球の“エアコン”とも言うべき深層海流に異変が起こっていることを示す兆候とみられる研究結果が、科学誌『ネイチャー』(226日号)に発表されました。地球温暖化の予測に使われているモデルでも、今回検出されたようなことは考慮されていないようです。地球の温暖化は予想以上に進んでいそうですね!

海の森づくり事業が急がれます!

 海の森(藻場)は、山の森と同じように地球の温暖化の原因となっている二酸化炭素を吸収したり、富栄養化の原因物質である窒素やリンを吸収したり溶存酸素を増加することで、海洋環境の浄化に役立っています。

海の森づくりを多くの市民参加ですすめ、@産卵場としての機能A幼稚仔魚の保育場としての機能B餌場としての機能C環境保全等の機能を生かし、豊かな海、美しい海を取り戻し、食糧としての水産資源を増やしましょう。

海の森づくり8つの技術

その1 空き生簀を活用した「コンブ種糸100m運動」

 周年複合養殖を行う手始めとして、魚介類養殖業者の方に、個人で手軽に出来る、『コンブ種糸100m運動』を呼びかけています。「100m運動」とは、出荷後の冬場の空養殖生簀やロープ等を活用した裏作・輪作として毎年12月から6月までコンブ藻場を造成し、漁場の老化を防ぎ、養殖経営の改善をお勧めする運動です。

その2 養殖漁場と同面積の海藻養殖による「環境保全型エコ養殖」

養殖面積と同面積でコンブ等海藻の養殖を行えば養殖生産量に見合った水質環境の浄化が図れます。水中の炭酸ガス(CO2)や給餌養殖から排出される糞尿や残渣などから水中に溶・排出される窒素やリン等の栄養塩類をコンブ、アオサ、ワカメ等の海藻類に吸収させるとそれ自体が成長するばかりでなく、同時に酸素を発生させます。また、海藻類にはビブリオの病原菌や赤潮を抑制する効果もあります。さらにナマコや貝や甲殻類等を放流すれば、養殖場の水質、低質を浄化すると同時に生態系のバランスを取り戻します。

その3 浅海での「藻礁盤」による海藻・海草藻場造成

汚れたヘドロや赤土で覆われた海藻や海草は、呼吸できず窒息死してしまいます。また、磯焼けが進行し砂漠化した死の海では植物は育ちません。「藻礁盤」(網状リーフ構造体)は、ヘドロや赤土の上に砂に替わる土壌を造り、海藻・海草を着生させ育成する技術です。魚道など様々な条件に適合できるように幅広いバリエーションを展開できる構造としました。網状リーフ構造体は、海から回収して何度もつくり直すことが出来ます。

その4 人工コンブで浅海の藻場づくり

その5 既設のコンクリート・鉄鋼魚礁への藻礁盤の設置

その6湾内での「延縄暖簾式人工藻場造成」

その7 沖合いでの「浮沈延縄式人工藻場造成」

その8 延縄式での「環境保全型複合エコ養殖

その9 ゼロエミッションで「省エネ陸上養殖」

等々、どの海域でも藻場づくりが可能です。

人工藻場で育った海藻は健康食品、医薬品、餌料・有機肥料・農薬や工業原料等として広く利用が期待されています。